chapter 6~ chapter 6 “喪失” ~ 中学に上がる頃にはすっかり大人しい子供になっていた。 小学校と同じようにグループ行動が出来ない子供は弾かれる。 小学生の時の経験上それを知っていた私はひたすら合わせて生きていた。 中学1年のクラスでは、1番大人しく暗い子が集まっている様なグループに所属した。 兄はまだ度々、私の部屋に忍び込んでくる。 部屋で寝ていたある日の明け方、ドアの開く音で目が覚めた。 兄だろう、と思った。 怖くて、金縛りにあったようだった。目が開けられない。 寝ていると思った兄はいつものように、手を私のパジャマの中に入れてくる。 下着を取られても、声が出せなかった。 目をつぶり、黙って、じっとやり過ごしていた。 黙っていれば、触ったり見たりするだけでそのうち出て行く。 いつもの様に兄が逃げるように部屋を出て行く時をひたすら待った。 行為はエスカレートするものかもしれない。 この日に限って、触るだけで済まなかった。 兄の指が入ってきた時、あまりの痛みに悲鳴をあげた。 初めて知る痛みだった。 兄は私の悲鳴に驚いて私を玄関の外に連れ出し 「誰にも言うな」と言った。 言えるはずがなかった。 今までだって誰にも言えずにここまで来たのだから。 部屋に戻ってまだ痛む場所が心配で下着を取ってみた。 下着に血がついていた。 中学1年の時はまだ生理も来ていなかったから、そんな事は初めてだった。 どうすればいいのかわからなくて下着は捨てた。 私が中学1年の時、兄は高校生だったはずだ。 それを最後に兄は手を出してこなくなった。 しばらくして兄に彼女が出来たと知った。 完全に矛先が違う所へ向いたのを知ってホッとした。 17歳で初めて男性と関係を持った時、血は出なかった。 その時ようやく『あれが私の処女喪失だったんだな』とぼんやり思った。 ◆chapter 6について(日記) へ ◆chapter 7 へ |